斉藤美奈子『名作うしろ読みプレミアム』を読んだ。名作の冒頭ならぬラスト一文をまとめて、紹介した本だが、非常に面白い。もちろん、ラスト一文だけではなく、そこにいたるあらすじなども紹介している。ややネタバレになる恐れはあるが。
個人的には、最初の一文よりも最後の一文の方が印象に残っているものは多い。まあ、良いラストは、今までの作品の流れを凝縮している部分はあるから当然か。
ということで、私なりの「名作うしろ読み」を紹介。本家と違って、さすがに作品解説やあらすじは省略。なんとなく、良い作品なんだろうなと思ってもらえれば本望。
といってもラストに記憶に残るほどの名文を書けるほどの作家で私が好きな作家はもう決まっていて、同じ人の作品が多くなる。
まずは森博嗣。これは完全に詩になるように狙っているとしか思えない。
短編「有限要素魔法」から
『安らかな死顔だった。』
短編「河童」から
『水は、冷たい。』
長編「すべてがFになる」
『ことりと、テーブルの上に置かれた記念品は、四角いプラスチックの黄色いブロック、・・・・・・、それは、立派なおもちゃの兵隊になることを夢見た小さな孤独だった。』
長編「今はもうない」
『それらの音も、光も、少年の思い出とともに、地球上のすべての大気に飛散し、拡散し、消散して、今はもうない。』
あと外せないのは、天才、津原泰水。エンタメ寄り作家で文章力は正直、NO1だと思っています(対抗は秋山瑞人)。
短編「玄い森の底から」
『皓い空に枝枝が染みて、先生、きれいです。』
短編「脛骨」
『若き日のわたしの屍だ。』
短編「延長コード」
『小春ちゃんはその川をじゃぶじゃぶ渡って、僕らには見えなかった景色の向こうに、それでいいかなって思いまして、つまり、消えちゃった。』
短編「琥珀みがき」
『でもきっと、私には何もくれない』
秋山瑞人はそもそも完結した作品が少ない(笑)
長編「イリヤの空、UFOの夏」
『園原基地の裏山に刻まれた、でっかいでっかい「よかったマーク」だ。』
・・・・・・と、これがラストだと思っていて念の為確認したら、違った(汗)。このあと、話題転換して4行ほど続きます。