シロクマあいすの日記

シロクマあいすの思いつきを書いたものです。

大滝瓶太『その謎を解いてはいけない』がスゴかった件

初めにタイトルを見たときは当然、ミステリだと思った。それも、ホラー寄り。

中身をパラパラと確認すると、「ん? コメディ」。

全五話(四・五話は前後編)の短編集だが、第一話「蛇怨館の殺人」を読んだ感想、「完全にギャグ」。そう、コメディでさえない、ギャグ作品。

しかし話が進むにつれ、ギャグだったはずの作品は、二話を通し三話で怪しさを増し、四話五話で完全に「なにやらスゴい物語」に進化した感じ。

基本フォーマットはミステリだが、相変わらずギャグで、SF風味があり、文体は段々と初めのラノベ寄りではなく、純文学になっていった。

魔法少女のコスプレをした作家、一(にのまえ)が、フェンスを跳び超えるときに下着が見えるシーンは、1ページにわたり、描写されているが、こんなに上手い文章は久しぶりに読んだ。

物語は本格ミステリとしても標準以上のできばえとなり、それ以上のメタ展開を見せ、最後には、思わず涙ぐみような青春小説として終わる。

どんな話かと言えば、結局「ミステリコメディ」としかいえないが、それ以上の何かを読後にもたらしてくれる傑作といっても過言ではないと思う。