※文中の作品タイトルの真相を暗示している場合があります。
アガサ・クリスティーといえば、本格ミステリ三大作家のひとりで、今もなお、愛読者も多く、映画化、ドラマ化も何度もされる誰もが知っている作家と言えるだろう。
初めて触れたのは30年以上前の小学生の頃。とはいえ、十作程度を読んだにすぎないのだが。
そして、日本産の本格ミステリが量産されるようになり、それに夢中になるなかで、クリスティーに触れる機会は激減した。
それを最近、読み始めたのはやはり、霜月蒼『アガサ・クリスティー完全攻略』の影響だ。
まずはポアロものから少しずつ読み返しているところだ。
ちなみに子供の頃、読んだポアロものは
以下、最近読んだもの。順番は読んだ順序ではなく、クリスティー文庫のナンバーが早いものから(つまりは執筆順)
・スタイルズ荘の怪事件
2020年6月読了。
☆☆☆★
デビュー作で地味ながら、人間関係の語弊やロマンスなどクリスティーらしさが詰まっている。
・ゴルフ場殺人事件
2019年11月読了。
☆☆☆
ロマンス要素など楽しく読めた。
- 青列車の秘密
2020年6月読了。
☆☆
途中まではとても楽しかったが、やはり真相がいまいち。もちろん、意外な犯人ではあるけれど、もう少しスマートにできなかったものか。
- 邪悪の家
2020年6月読了。
☆☆☆
トリックは見え見えながら、とにかく演出の見事さが際立つ。
- エッジウェア卿の死
2019年10月読了。
☆☆☆
トリックは予想通りながら、それをひっぱる手腕が見事。
2020年6月読了。
☆☆☆★
内容をすでに知っていたので、ちょっと評価しづらい。古典といえば古典。
- 死との約束
2019年10月読了
☆☆☆☆
ストーリーテーリングの見事さ。
- ポアロのクリスマス
2020年11月読了
☆☆☆☆
意外な犯人。ただ、密室ものと思ってはいけない。
- 葬儀を終えて
2019年8月読了。
☆☆☆☆☆
アンフェア部分を解決していれば、パーフェクトだった。意外な犯人・真相は◎。
改めて見ると、クリスティーの魅力は決してトリックではなく、ミステリ的な緻密な論理性はほぼなく、そのストーリーテーリングと伏線の妙にあると言ってもよい。
意外な犯人が多いが、それもあくまでもストーリーと伏線のなかでの意外さであって、ワンアイディアとしての意外さは「アクロイド」「オリエント」「ABC」ぐらいか。
ただ、ストーリーの型を見事に使いこなすだけに、似通ったものはどうしても出てします。
「ナイルに死す」と「白昼の悪魔」
「邪悪な家」と「エッジウェア卿の死」
「死との約束」と「ポアロのクリスマス」と「葬儀を終えて」
しかし、これらが相似しているからといってクリスティーの価値が下がるわけではなく、むしろ、基本のフォーマットを作り上げたと見るべきだろう。