シロクマあいすの日記

シロクマあいすの思いつきを書いたものです。

アガサ・クリスティ『ミス・マープルの名推理 パディントン発4時50分』書評

ハヤカワジュニアミステリ版です。いいですね、これ。

字が大きくて読みやすい(老眼にはGOOD)、イラストで名前の覚えづらい外国人もイメージしやすい、そして原作に忠実に訳されている!

でも、やっぱり老婆探偵マープルのキャラデザがどうみても白髪の若い女性にしかみえず、「お前は掟上今日子か!」とツッコミたくなります。

 

さて、それはともかく肝心の内容。

ざっと、あらすじ。

向かい側を走る汽車の中で女性が絞め殺されたのをみた老婦人がマープルに相談。しかし、死体は汽車の中にも見つからず、警察も信じてくれない。マープルは凄腕の家事代行者ルーシーを雇い、死体のあるであろう、屋敷(線路脇にある)を調査してもらう。やがて死体がみつかり・・・・・・。殺されたのは誰なのか! 犯人は!

 

自分でも意外なことにクリスティー好きを語っておきながら、ミス・マープルものは初読。そして実際、読んでみると、やはりマープルの影が薄い。最後の最後に活躍するが、そもそも真相特定の論理が何もなく、これといったトリックもない(いや、実は非常に細やかなトリックが複数あるのだが、細やかすぎてメインにならない)ため、いなくてもいいのでは、と思えてしまう。

しかし、マープルの仲間が非常に魅力的だ。高い知性を持ちながら各家庭に高級で雇われる凄腕の家事代行業者ルーシー。ルーシーは大金持ちに専属になってくれと頼まれてもそれを断って家庭を渡り歩く。ってなにこの設定!ラノベラノベなのか?

クリスティだからもちろん、ラブロマンスもある。上記のルーシーはもちろん、屋敷の長女エマにもラブロマンス。

なによりもサスペンスが良い。誰が犯人か以前に、一体なにか起きたのか?死体は誰か?最後の最後まで分からない。派手さはない。しかし、とにかく先が読みたくなって仕方が無い。

最後に明かされる真相は、クリスティだからもちろん、意外だ。地味だが、意外な犯人ものとしても素晴らしい。

でも、この作品ってミス・マープルものでは、中くらいの評価だよ。恐るべし、クリスティー